Cafepedia(カフェぺディア)とはcafe+encyclopedia(百科事典)を合成したもので、「百科の学術」つまり生物や物理、文化や社会、芸術や音楽…etc様々な「科学」をキーワードに、様々な方々を語り手に迎え、知的好奇心をくすぐる様々な話題をつまみにして、おしゃれなカフェで飲み物を片手に楽しい時間をすごそうという企画です。

カフェに参加している人だけでなく、その場に居合わせたお店のお客さん全員が、「科学」の話をBGMにお酒を楽しめるような雰囲気を生み出す。科学夜話”Cafepedia(カフェペディア)”はそんな粋な空間を目指しています。

2009年9月14日月曜日

報告書 第十九夜「深海底の変わった生物たち~深海生物の世界から」

8月20日(火)に科学夜話Cafepedia第十九夜を開催しました。
語り手はいのちのたび博物館で甲殻類・貝類を担当されている、自称”最もマニアックな学芸員”下村通誉さんです。

なぜにマニアックか?
今回、カフェペディアで話を伺い、マニアック好き(マニアックというわけではなくマニアックなものが好き)な私、管理人にはビビッときました。さてどんな話が繰り広げられたのでしょうか?報告したいと思います。

開演前の会場は、いつも通り、心地よいミュージックとおいしい食事でなごやかな雰囲気です。
ですが、「深海底の変わった生物たち」というタイトルに惹かれて集まった人たちです。"変わった物"好きであることは確かでしょう。


いよいよ深海の世界のスタートです。
下村さん、かなりお酒がいけるほうで、開始前に軽くビールをいただいております。
まずは、深海の定義から
「地球の70%は海洋で、そのうち3,000m以上の深さの海が76%、地球の生物を知るということは深海の生物を知るということである。」
いきなりの先制パンチです。
「深海なんてマイナーな生物が住む世界だ。だから変な生きものばかりなんだ。」と思っていた自分はなんて視野の狭いんだ・・・。これから先の話はまさに未知の深海へと突入する気持ちでした。

さて、深海の定義とは200m以上の深さの海だそうです。なぜか?
深くなるほど太陽の光がとどかなくなる海において200mの深さは植物プランクトンの光合成と呼吸の収支が0となる深さなのだそうです。つまり、陸上生態系のように太陽光で光合成をする植物に頼ることができない世界、つまり動物が動物を食べる過酷な競争の世界ということでしょうか?しかし一方では環境の時間や季節による変動が少ないのですから安定した世界とも言えます。

と今、書きながらひらめきました。
講演後のアフタートークでどっぷり飲みながら思った一つの疑問、

深海では雄と雌が出会うことができる機会は少なく、繁殖行動は非常に困難です。アンコウには雄が見つけた雌と離れないように雌の体と一体化したり、繁殖にはかなり努力をしているそうなのですが、深海が安定した環境であるならば、わざわざ雌雄で交配する必要はないのではないか?昆虫のナナフシのように単為生殖メインの繁殖方法がなぜ広まらないのか?

と思ったのですが、あさはかでした。
確かに時間や季節変動といった面では安定していますが、動物が動物を食べる過酷な競争の世界であるならば、進化の方向性としては環境への適応というよりも純粋に動物同士の競争、いかに食べるか、いかに食べられないかについて進化の方向性は特化していく。そのためには雌雄で交配し、遺伝子を多様化させていくことは不可欠!
どうですか、この考え?

と思うとその後に出てきた様々な深海生物の進化の方向性の話が腑に落ちてきました。
一つは「深海生物の巨大化」
同種の生物が海の浅いところにも深いところにも生息する場合、深くなるほど巨大化するという傾向です。紹介された生物は深海のバルタン星人こと(他HPによる)エンマノタナイス、個人的にはあこがれの存在であるオオグソクムシです。一方で深くなるほど小さくなる矮小化傾向の生物もいるそうで、どちらかの二極化が進んでいるそうです。
これも、競争のルールがシンプルであれば、戦略もシンプルに二極化するというのもうなずけるような気がします。

あくまでも素人の考えなので、突っ込みどころがあれば、みなさまご指摘ください。

もう一つの深海の環境条件、光に対する適応の話も伺いました。
深海生物の体色はだいたい黒、銀、赤、白だそうで、200~700mは黒・銀、700~数千mは赤、数千mより深くなると白が多くなるそうです。
で、見る器官である目については水深1,000mまではなんとか光をとらえようと目が大きくなる傾向なのですが、それより深くなると目は退化する傾向にあるそうです。
深くなるほど光が届かなくなるというシンプルな傾向であるが故に環境と生物の体のつくりの関係がはっきりわかり、生物のおもしろさを感じます。
と、思いきやなんとポニョのようにクラゲに乗って海の深いところ浅いところを移動するというオナシグソクムシというやつもいるらしくて、深海はシンプルな生物相かと思いきやなかなか複雑です。
  
話をすべて書くと長くなってしまうので、最後に一つ。
熱水生態系の話です。
海底には地上同様に火山活動の活発な箇所で地熱に熱せられた水が噴出するポイントがあり、その周辺では独自の生物群集が形成されています。
火山活動の盛んな場所ですから有毒な硫化水素がでまくっています。チューブワームとかシロウリガイなどの生物はその硫化水素を無毒化したり、はたまた硫化水素からエネルギーを生み出すのです。これはすごいことです。陸上生物の生態系では植物の行う光合成という手段で太陽光からエネルギーを手に入れています。浅い海の生態系もそうです。しかしこの熱水生態系はまったく太陽に頼っていません。しいて言うなら地球そのもののエネルギーを利用している生態系です。
 
私、管理人は生物同士のつながりや多様性など生態系に非常に興味関心を持っており、生態系的な物事の捉え方は視野が広いことだと思っていましたが、この熱水生態系や深海の生物相の話を聞き、私が思っていた生態系は所詮、人間中心の生態系的考え方であったことに気づきました。
ここで最初の下村さんの先制パンチ「地球の生物を知ると言うことは深海の生物を知ることである」という言葉がボディブローのように効いてきました。
 
今回のカフェペディアで私にとっては未知の世界である深海の世界に触れて、さらに思考の深度が深くなれたような気がします。
 
さて、メインの講義の後に標本の登場です。いつものカフェペディアでは標本などが講義の前に会場に展示されているのですが、今回は逆です。講義で興味津々となった参加者は・・・。
標本と下村さんにがぶりつきです。小さな参加者の子どもたちも下村さんに質問していました。
下村さんが深海の世界のおもしろさを噴き出す”熱水噴出孔”、集まる参加者がそこから出る”毒(?)”をエネルギーに変えるたくましい生物に思えました。
もちろん、その後も下村さんの噴き出す”毒”をお酒とともに楽しみました。

今回も報告というより、私自身の思考が先行してしまいました。
もっともっとおもしろい話が盛りだくさんでしたが、それは参加した方の胸の内にということで・・・。報告はここまでにしておきます。

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