Cafepedia(カフェぺディア)とはcafe+encyclopedia(百科事典)を合成したもので、「百科の学術」つまり生物や物理、文化や社会、芸術や音楽…etc様々な「科学」をキーワードに、様々な方々を語り手に迎え、知的好奇心をくすぐる様々な話題をつまみにして、おしゃれなカフェで飲み物を片手に楽しい時間をすごそうという企画です。

カフェに参加している人だけでなく、その場に居合わせたお店のお客さん全員が、「科学」の話をBGMにお酒を楽しめるような雰囲気を生み出す。科学夜話”Cafepedia(カフェペディア)”はそんな粋な空間を目指しています。

2010年9月9日木曜日

報告書 第三十一夜「虫たちとの30年~博物館での昆虫研究~」

これまた開催から時間がたってしまいましたが前々回の報告書です。

報告書を書く際には当日撮影したVTRを見返しています。
一人VTRを見ながら、リアルタイムで話を聞いていたときには気づかなかった新たな発見に「へーっ」と思ったり、分からない部分があるといろいろと自分で調べたり、時にはアフターカフェペディアの会話を思い出しながらニヤニヤしたりと、カフェペディアを二倍楽しんでおります。

さて、今回は8/11(水)にいのちのたび博物館の昆虫担当学芸員である上田さんを語り手にお迎えして開催したカフェペディアの報告です。


今回はタイトルに「昆虫」があったためか、会場には子どもの姿がちらほら。
ということで、上田さんの第一声は「今日のタイトルは”あなたも博物館の学芸員になれるかもしれない”にしよう。」っと。
こういうこともアリです。過去には当日にタイトルが明らかになった回もありましたし・・・。こういう即興性が私的には魅力です。

上田さんは仕事の一つとして「コヤガ」という「ガ」の分類を研究されているとのこと。
なぜ分類か?

「並べて分けるのが好き!」

だそうです。う~ん、並べて分ける・・・おもしろいのだろうか?

「並べていくと何かが見えてくる。それがおもしろい!」

なんとなく分かります!私も過去のカフェペディアのタイトルを眺めていると、その時々の記憶が頭の中で並んで、結びつき、突然、何か新しい考えが沸き起こったりします。その時はさらに新しい世界に進んだような気がして、わくわくどきどきします。この感覚に近いのかなー。

さて語りは進み、自然史博物館がいのちのたび博物館となる前、八幡駅のビル内に博物館があったころの話です。私は生まれも育ちも北九州市です。子どもの頃、博物館には何度か行きましたが、駅ビルの少し薄暗い階段を上がって入っていくと、所狭しと剥製や骨が並んでいるのが恐ろしくて、遊園地のお化け屋敷に入るのと同じような気持ちだった記憶があります(博物館関係者のみなさん申し訳ありません。今は剥製や骨が並んでいるとわくわくするまっとうな大人になっています。)。
そんな当時の懐かしい博物館の写真とともにその裏に隠された苦労(?)話が上田さんの口から次々と飛び出します。


上田さんが昆虫担当学芸員としてはじめてやった仕事はクジラの骨洗い!
手に入れたクジラを骨格標本にするために試行錯誤されたそうで、クジラの骨には油がたっぷり含まれていてこれを抜かなければならない。さてどうするか?
川原に埋めて水にさらすのが常套手段なのだそうですが、川の下流の人から怒られる可能性がある。それならと海水にさらして油を抜こうと響灘の砂浜に埋めて3年、意気揚々と堀りあげてみると油は抜けていなかった・・・。なぜなら響灘の海水温が低かったのです!
最終手段として給食用のなべで廃屋二軒分の廃材を燃やして煮て油を抜き、ようやく完成したのが現在はいのちの博物館、アースモールの天井に浮かぶクジラの骨格標本なんです!!

続いて、ウバザメの剥製物語


若松の脇田漁協から8mのウバザメが定置網にかかったとの連絡があり、現場に駆けつけたものの港に備え付けのクレーンでは海中から引き上げることができない、そのときたまたま白島石油備蓄基地建設のために停泊していたクレーン船がウバザメを海中から陸上へと引き上げてくれたのです!
これで一安心と思いきや陸に上がった8mのウバザメは重すぎてトラックに載せようにもびくとも動かない。そこでウバザメを傷つけないように毛布に巻き、トラックの荷台を傾け、ビニールシートを敷き、水を流しながらトラックのウィンチで引きずり上げ、なんとかトラックに載せ運んだのですが、今度は剥製にしようにも時期は年度末、予算がない!ほおっておけば腐ってしまう。そこで青果市場の巨大冷凍庫に保管しようとしたのですが、冷凍庫に入れるときはやわらかいから冷凍庫の狭い入り口を通るのですが、出すときは硬く凍っているので、冷凍庫内で解凍しないと出せない、そのためには冷凍庫の電源を数日とめなければなりません。そんなこと青果市場がOKするはずもなく、最後の手段はその年度に購入すべく交渉を進めていたイクチオサウルスの化石を購入先に1年間待ってもらい、その予算をウバザメの剥製製作にまわしたのであります。それが、現在、生物多様性館の天井に鎮座するウバザメなのです!

というように博物館での仕事というのはそのときそのときが前例のないもので、その都度知恵を絞って対応していかなければなりません。冒険野郎マクガイバーのようにです(例えが古かったでしょうか)。

その他にも日本にはいのちのたび博物館にしかないアフリカゾウの剥製に隠された秘話などなど。
博物館の展示物はどこからともなく集まってきたわけではなく、その一つ一つにその博物館にやってきた物語があるのです。そんな視点で博物館に行くとまた違った面で感慨深いものがあります。ぜひとも全ての展示物の物語を聞きたいものであります。

さて少し話しは変わって、そもそも博物館の仕事とは何か
・標本の収集
・標本の保存と整理
・標本の研究
・展示普及活動
からなります。で、この4つはそれぞれがつながっていてそれがバランスよく行われることが大切なのだそうです。


標本入手でおもしろい話がありました。
博物館の標本には個人コレクションの寄贈が多くあるのだそうですが、これが結構大変なのだそうで、まずは未整理なものが多く、これを整理しなければならない。整理する際にはどこで、だれが、いつ採集したのかをラベル化しないといけないのですが、個人作成のラベルは手書きの場合は特に癖字や略字で判読が難しかったり、また採集地については古い地名で現在どこなのかがわからない。採集日も例えば2602年6月5日などと書いてあって、これは未来から来た標本なのか?と思いきや2602年というのは皇紀での表記であり、西暦に直すには660年を引かなければならないということなのだそうです。古い標本だと採集した人が既に亡くなっていたりして、そういった情報を推理していくのがすごく大変なんだそうです。

こうやって入手した標本を整理し、データベース化していくことは博物館にとって重要な仕事で様々な研究が行われるうえでの礎になるものなのですが、このデータベース化の仕事は研究としてあまり評価されていないというのが現状だそうです。

これまで、私は博物館の展示を”見る”ことしかしてなかったように思います。上田さんのお話を伺い、博物館は展示から”読み取る”場所であると感じました。何を読み取るかは人それぞれであり、また同じ人でもその時々で違うはずです。
最初の上田さんの言葉にあった「並べていくと何かが見えてくる。これが面白い!」これが博物館のおもしろさをあらわしているのではないかと、ふと思いました。
また博物館に行ってみよう・・・。

あれっ、ここまで報告書を読んでみて昆虫の話がないと思ったのでは?


実はその後、琥珀の中で見つかったカマキリの化石の話があったのです。
しかも体長1mmほどのカマキリ・・・。現生種と比較して化石を同定する。そのためにも現生種の標本の整理、データベース化は必要なんですね。

アフターカフェペディアには子どもたちが上田さんに質問をぶつけていました。


で、子どもたち帰ったあとも話は延々と続き、さらに博物館の”いろいろ”な仕事(見えない虫が見える人への対応方法など・・・)の話をうかがい、本当にいろいろあるなーと思いました。そうそう、本編では語られませんでしたが、上田さんが昆虫の研究に進んでいくことになった話もおもしろかったです。次はそのあたりもふくめてカフェペディアでの語り、お願いします。上田さん、遅い時間まで楽しいお話ありがとうございました。

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