今回のテーマは「川のいきもの」。生まれ育った私の居住地の近くには大きな川がありません。コンクリート張りの小さな溝があるのみです。が、その溝に入って、子どものころはよく遊びました。まあ、小さな溝ですから魚はいません。水中で怪しくゆらめくイトミミズや山から流れてきたのか、はたまた海から上がってきたのかわかりませんが石積みの隙間にいるカニにワクワクしました。しかし、それ以上に水の中に靴のままジャブジャブ入っていく(足首程度の深さしかありませんが)感覚が楽しかったように思います。今回の中島さんの話でその楽しい感覚がよみがえりました。さて、どんな話だったのか、報告させていただきます。長文&まとまりのない文になるかもしれませんがご了承ください。
様々な川のいきものの標本を持ってきていただきました。個人的に好きなのはヒメドロムシです。写真と通り、顕微鏡で観察するとその愛らしさがわかります。ぜひ、その魅力を伝えたかったのですが、残念ながら顕微鏡越しの写真を撮影し損ねてしまいました。

さて、今回のタイトルは「九州にすむ川のいきもの」ということで、まずは九州という場所の特徴の説明がありました。
「九州は小さい島で・・・」、えっ”島”!しかも小さい?生まれも育ちも九州の私にとっては衝撃的な事実です。私にとっては九州は九州大陸です。うーん、普段、宇宙の話や地球スケールの生態系、生物の進化などの大スケールな話が大好きで、自然教室の子どもたちにもそんな話ばかりしているのですが、自分が住んでいる九州が島だという認識を持っていなかったという自分自身に驚いてしまいました。
気を取り直して、「九州は小さい割には1000水系もある川の多い島で・・・」、またもや「えっ!」です。身近に小さな溝しかなかった自分にとっては川が多いなんてこれっぽっちも思ったことがありませんでした・・・。

出だしから、「井の中の蛙」とでも言いましょうか、自分の住んでいるところが全く見えていなかったことに気づき大ショックを受けました。
普段は身近なところで十分に生態系の営みを発見できるよと言って、土の中の生きもの探しなどを自然教室の子どもたちと楽しみつつ、その身近な世界と地球や宇宙のつながりを話しているのですが、その中間のスケールの認識が全くありませんでした。「近く」と「遠く」を見すぎていて「日常」の認識を無くしていたことに気づきました。
そんな私の生まれ育った”島”、九州は川が多いため、その生物相は多様であるそうです。特に淡水魚の生物相は多様だそうで、幼少から淡水の生きものに執着していた(本人の表現です)中島さんは、生まれ育った東京から迷うことなく九州の大学にやってきたそうです。なぜ、中島さんが淡水の生きものに執着するのか?それについては最後に報告させていただきたいと思います。
さて、多様な生きものが生息する九州の川ですが、その生物相は大きく4つのタイプに分かれるのだそうです。さらに北部は種数が多く、南部は少ないという傾向があります。それはなぜか?3年間で1200地点で調査した結果(計算すると毎日調査して1日1地点以上)をもとに話していただきました。文章のみで表現するのでわかりにくいですが、なんとか書いてみます。ここで語る”いきもの”は淡水魚などの淡水に住むいきものとして考えるとわかりやすいと思います。①1500~50万年前、大陸とつながっていて、湿地ができたり、なくなったりしており、まんべんなくいろんな種がいました。
②40万年前、今の九州の形になり、中央に山ができ川の生きものは自由に行き来できなくなりました。
③9万年前、阿蘇山の大噴火で今の大分南部は阿蘇山の火砕流に襲われ、川の生物相は壊滅状態になりました。
④2万年前、海水域が低下し、九州の東部の川は本州の川とつながり、西部の川は中国大陸とつながりました。南部はどこの川ともつながりませんでした。
⑤8千年前、縄文海進という海水面の上昇が起き、低地の川は海に沈み、そこに住んでいた川の生き物はいなくなりました。
⑥4~6千年前、今度は霧島山の大噴火で南九州はその堆積物で埋まり、川の生きものは壊滅的な状態になりました。
そして、現在に至る。
とうことで、火山の影響がなかった九州北部は川の生きものの種数が多く、さらに④の理由で、北東部は本州系の魚、北西部は大陸系の魚が多く分布しています。一方、火山の影響を受けた九州南部は生きものの種数が少ないのですが、最近、噴火した霧島山の影響を受けた鹿児島付近は川の生きもの生息が回復しておらず、種数が少なく、それよりも比較的古い時代に噴火した阿蘇山の影響を受けた、大分南部は鹿児島付近に比べてやや種数が多いという特徴があるそうです。一方、九州北西部にも関わらず種数が少ない阿蘇から有明海に流れる白川は阿蘇山のカルデラが決壊してできた川で比較的新しい川なので種数が少ないということです。
と、一気に書きましたがご理解いただけたでしょうか?
山が火を噴いたり、海が上がったり下がったり、他の川とつながったり離れたり、そんなダイナミックかつ気まぐれ(?)な地球の動きに翻弄されながらも、幸運、もしかしたら根性で生き残った生物たちがそれぞれ長い時間のなかでたどり着いた地域で暮らしているのが九州の川のいきもののおもしろさであると思います。
私にとって九州は九州大陸ですが、川同士がつながらない限り移動できない川のいきもの(淡水魚)たちにとって、今暮らしている川は大海に等しいのでは・・・などと思ったりしたのですが、実は大雨が降って川があふれたり、また、洪水で海の上に淡水層ができたりするとそれを通じて移動することがあるそうです。火山の噴火で壊滅させられる一方で洪水で生息域を広げる。天変地異で世界が狭くなったり、広くなったり、淡水の生き物は弱いのか強いのかよくわかりません。
そんな風に翻弄され現在に至る川のいきものたちですが、さらに大きな事件が起きているということです。それは人的影響というやつです。というと水質汚染とかコンクリート護岸などを思い浮かべるかもしれませんが、中島さんの挙げた人的影響は、「安易な放流」、「安易な生息地公開」、「安易な外来種駆除」です。「安易な放流」の問題は、放流時に全く意図しない種が混ざることでその地域の生物相に影響を与えたり、また同じ種だからといって違う地域の個体を放流することによる遺伝子が混雑したり、その地域に生息できる個体数以上の個体を放流することで、結局は他の個体が生息できなくなったりということです。
「安易な生息地公開」の問題は業者や悪いマニアによる乱獲を招くこと。
「安易な外来種駆除」の問題は、オオクチバスによる捕食から貴重なトンボのヤゴを守ろうということでオオクチバスを駆除したところ、実はオオクチバスはヤゴだけでなくザリガニも捕食していて、オオクチバスの駆除によりザリガニが増え、ザリガニが水草を食べ、池の中の水草が減り、それを隠れ場としていたヤゴが捕食されやすくなり、ヤゴの数が減ってしまったという実例を挙げていただきました。
最後に、世界に誇る九州の川の生きものたちを紹介していただきました。
中島さんが限りない愛情を注いでいるシマドジョウ、眼が怖いアリアケギハチ、非常に地味なヒナモロコ、研究者もマニアも大好きなタナゴ、絶滅したと言われていたけど九州北部では普通に食べているアオギス、見つけて写真を撮る手が震えたアリアケヒメシラウオ、中島さんがひそかに地位向上を図っているハガマルヒメドロムシ、見た瞬間おおっ!となるベッコウサンショウオ。「淡水も嫌い、塩水も嫌い、微妙な塩分濃度が好きとかわがまま言うから絶滅しそうになるんだ」と時にはきつい言葉も浴びせながら、川の生きものたちを愛情たっぷりに紹介する中島さんは、まさに淡水の生きものたちにとってはツンデレ研究者だなーと思いました。
最後に中島さんが川のいきものにひきつけられる理由を聞いてみました。
「いきものは海から生まれた。淡水出身のいきものはいない。地球上で約3%しか存在しない淡水に頑張って生きている。そのはかなさが心を引きつける」のだそうです。
「はかなさ」に魅かれる。情緒あふれるその言葉がすごく印象に残りました。
語りの時間後のフリートークでは多くの方々を囲んで、夜遅くまで話が続き、私もついつい飲みすぎてしましました。最終的に解散した時間は店の閉店時間をかなりオーバー、申し訳ありませんでした。申し訳ないといえば、お酒好きでありながら、標本を持ってきてという私のリクエストに答えるため車で来ざるをえなかった中島さん。一滴もお酒を飲まずに夜遅くまで、酒を飲む私たちにお付き合いいただき、申し訳ありませんでした。次回はぜひともたっぷりお酒を酌み交わしながらヒメドロムシについて語り合いましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿