Cafepedia(カフェぺディア)とはcafe+encyclopedia(百科事典)を合成したもので、「百科の学術」つまり生物や物理、文化や社会、芸術や音楽…etc様々な「科学」をキーワードに、様々な方々を語り手に迎え、知的好奇心をくすぐる様々な話題をつまみにして、おしゃれなカフェで飲み物を片手に楽しい時間をすごそうという企画です。

カフェに参加している人だけでなく、その場に居合わせたお店のお客さん全員が、「科学」の話をBGMにお酒を楽しめるような雰囲気を生み出す。科学夜話”Cafepedia(カフェペディア)”はそんな粋な空間を目指しています。

2011年7月5日火曜日

報告書 第三十七夜「不思議な現象、超伝導。そのヒミツに迫る!!」

2月23日に開催した第三十七夜の報告書です。
福岡大学理学部物理科学科超伝導物性教授の西田昭彦さんを語り手に迎え、開催しました。

西田さんとは昨年末に福岡大学で行われた福岡県の科学コミュニケーションネットワークSAFnetの立ち上げ式の打ち上げで同じテーブルになり、名刺交換させていただきました。その後、私世話人の突然のメールでの依頼にも関わらず、快く語り手を引き受けていただいたことで、今回のカフェペディアが実現しました。

話のスタートは2027年の開業に向けた整備計画が発表されたばかりのリニア新幹線からです。

リニアモーターカー、日本語で言うと磁気浮上式軌道で、その名の通り磁力で浮き上がり、さらに磁力で推進します。その為には強力な磁力が必要なため、列車内に超伝導電磁石が設置されています。

普通の磁石じゃだめなのかという疑問がわいてきます。通常の磁石、電磁石は電流を流して磁力を発生させるのですが、強い磁力を発生させるには強い電流を流す必要がありますが、電流が強くなればなるほど熱を発生してしまいます。そのため常伝導体による電磁石では1万ガウス、ピップエレキバンの10倍くらい磁力が限界だそうです。一方、超伝導磁石では電気抵抗がなくなるので、強い電流を流しても熱は発生せず、10万ガウスまで磁力を高めることができます。ピップエレキバンの100倍の磁力です!(ピップエレキバンという単位がピンとくるようなこないような・・・)。

上海には既にリニア鉄道が営業しているのですが、これは常伝導磁石で1㎝しか浮かないそうです。それに対して超伝導磁石であれば10㎝は浮くそうで、地震国の日本では1㎝浮上では安全性に問題があり、超伝導磁石を使ったリニア鉄道になります。

強力な磁力を発生できるほかにも超伝導磁石の優れた点は起動時に電流を流し電磁石にしてしまえば、電気抵抗がゼロなのでその後電流を流す必要はないそうです。厳密に言うと超伝導体を冷やす為のエネルギーは必要だけれども、浮いている状態を維持するためのエネルギーは必要ないのです。

リニア新幹線はまだ先の話ですが、実は身近なところで既に超伝導磁石は使用されていて、私はまだ未経験ですが、医療機関で利用されている体の内部を輪切りして見ることができる核磁気共鳴画像法、MRIです!このMRI、トンネルのような装置に入って画像撮影するのですが、このトンネルの周りに液体ヘリウムに満たされた超伝導磁石が組み込まれているのです。超伝導磁石って身近な技術だったのですね。

ここまでの話はイントロダクションだったのですが、話題のリニア新幹線やお世話になったことのある人も多いMRIから話がはじまったためか、スタートから会場から質問がいろいろと飛び交いました。

話はいよいよ超伝導という現象の不思議に迫っていきます。

「超伝導の不思議とは電気抵抗=0と内部磁場= 0二つのゼロです。」

電気抵抗=0はイントロダクションで話題になりましたが、まずはその発見に至るまでの話からです。
電気抵抗とは、電子が金属原子と衝突することで発生します。金属原子は熱エネルギーによる振動し、電子が流れていくのを妨げてしまいます。それでは金属原子の温度を全ての運動が止まる絶対零度-273℃まで下げていくとどうなるのか?という疑問が生じます。絶対温度の概念を導き、その名が温度の単位Kにもなった、ケルビン卿は「絶対零度になると電子も運動を止めるから、抵抗は高くなるなずだ」と考えました。一方、魔法瓶を発明した(魔法瓶発明がメインではありませんが)デュワーさんは「抵抗が無くなる」と予想しました。さて、ケルビンとデュワー、どちらの予想が正しかったのか・・・。

ヘリウムを液化することが可能になり、1911年、液化ヘリウムを使って行われた実験で超伝導状態が発見されました。今年、2011年は超伝導100周年ということで、世界中で様々なイベントが行われているそうです。

西田さん曰く、「今回のカフェペディアもその一つです」。

・・・本当は偶然です。昨年2010年の素数をテーマに開催した第三十五夜のカフェペディア時もカシミール生誕10周年という記念すべき年でした。閃くままに3年前の2月22日にネコの日だからということで、ノラネコをテーマに第1回カフェペディアを開催し、それ以降もいろいろな場で出会った方々に語り手をお願いしてきました。カフェペディアが続けてこれたのには、いろいろな偶然が積み重なったということも要因としてありそうです。こういうことをセレンディピティと言うのでしょうか。このセレンディピティという言葉も第三十三夜のカフェペディアで私は初めて出会いました。

そう思っていると、なんと超伝導の発見もセレンディピティだそうです。温度を下げながら電気抵抗を測定する実験を行っていたところ、装置の不具合で温度が上がったり下がったりしていて、その温度の変化に合わせて電気抵抗がゼロになる状態が発生したり、しなかったりしたそうです。そこで、意図的に温度を上げてたり、下げたりしてみたら、超伝導状態が確認できたということです。さらなる偶然は測定を行っていた水銀の転移温度が冷やす為に使用していた液体ヘリウムの温度と同じだったということです。違う金属を使用していたら、超伝導現象は発見できなかったかもしれません。

転移温度という言葉がでてきましたが、「超伝導は相転移現象」とも言えます。
相転移の定義は「温度、圧力、磁場などによって物質の状態が不連続に一斉に変化すること」となります。
イメージしやすい相転移現象は水が100℃で水蒸気になり、0℃で氷になるというものです。

物質の状態というと気体、液体、固体の3状態しかイメージにありませんでしたが、まだまだ我々の知らない未知の状態があるということになります。さらに想像が膨らんで、宇宙空間の温度は-270.42
℃であるということを聞いた事があります。となると宇宙空間では超伝導状態が普通の状態だということになりますよね。むしろ地球上での状態の方が特殊というか・・・。

となると我々の理解する物理科学というものは特殊な地球限定物理科学となるのでしょうか?
物理科学の究極目標は全て現象を一つの理論で表すといことであると聞いた事があります。未知の条件がある中でそれは本当に可能なのだろうか・・・などと素人考えですが思ってしまいます。

さて、電気抵抗がゼロになる仕組みは、電子がクーパーペアにを組むことで抵抗がゼロになる・・・。理解が及びませんでした。今後、勉強します。
気を取り直して、もう一つのゼロ、磁場ゼロの話です。

これはカフェペディア開催前に西田さんの研究室にお邪魔した際に見せていただいた実験です。開催のお知らせ時に掲載した写真で紹介した。超伝導状態にある超伝導体の上で磁石が浮いているやつです。

よくよく考えると小学生のころ、磁石をN極同士、S局同士で向かいあわせて、浮かせて遊んでいました。ただし、このときには磁石が動かないように支えておく必要がありました。しかし、超伝導体の上に浮いている磁石は何の支えも無く、浮いています。しかも磁石のN極S極の向きを変えても浮きます。なぜ浮いているのか?よくよく考えると不思議です。

これは超伝導体が完全反磁性体であるマイスナー効果によるものなのです。と言ってもピンときませんが、磁石から出る磁力線を超伝導体がはじくことで磁石が浮いているということです。しかもただはじくだけでは、一点にとどまることはできませんが、超伝導体内に不純物が混じることで、その部分にだけ磁力線が通り、それに固定されることで、安定して一点に浮くことになります。これを“ピン止め効果”と言います。純粋な超伝導体だとこの“ピン止め効果“は生じません。不純物が混じった超伝導体でないと“ピン止め効果“は起こらないのです。超伝導磁石をつくるにはこの不純物の混じった超伝導体、第二種超伝導体が用いられるそうで、この”ピン止め効果”がないと超伝導磁石はできないそうです。なぜできないか・・・。理解不足です。勉強します。


さてさて、超伝導体になるのは液体ヘリウムで実現される-269℃という超低温が必要なのですが、1986年に液体窒素による-196℃でも超伝導体になる物質が発見されました。この発見にも、偶然、セレンディピティが作用しました。超伝導体を作る際には物質の構造を検討し、設計(!)を行うそうなのですが、発見時には1:1:3の物質を作ろうとしたのですが2:1:4の物質ができてしまい、この物質を調べてみるとなんと液体窒素で超伝導現象が発生したのです!これが高温超伝導の発見となりました。


さて高温と言っても-196℃です。十分に低温のような気がするのですが、液体ヘリウムを使用する-269℃と液体窒素による-196℃では冷却費用がケタ違いだそうです。液体ヘリウムは1Lあたり2,000円でお酒なみの価格ですが、液体窒素であれば1Lあたり50円程度です。なぜこんなに価格が違うかというと大気中は8割が窒素ですが、ヘリウムは大気中には0.0005%しか含まれていません。高価な理由がわかります。実際は液体ヘリウムは大気中のヘリウムではなく液化天然ガスから精製するそうです。

高温超伝導体の発見でMRIなどの実用分野での低温超伝導体は全て高温伝導体に置き換わるかと思いきや、実は高温伝導体にも問題があって、高温伝導体は焼き物なので硬くてもろく、加工したり曲げたりが困難なのだそうです。なかなか上手くいかないものです。

超伝導体の実用ということで、前述のリニア鉄道や磁石以外にもいろいろと紹介していただきました。その一つが超伝導ケーブルです。超伝導体は電気抵抗がゼロですから電気を送電する際のロスが全くありません。そこでこのケーブルを全地球規模で張り巡らせれば、自然エネルギーによる発電が効率的に行えるのです!太陽光や風力などの自然エネルギーは場所により多寡があります。自然エネルギーが豊富な場所で発電しても使用する場所に送電する際に送電ロスで電流が失われては効率が悪くなってしまいます。そこで超伝導ケ-ブルを使用すれば、太陽光発電ならば昼夜、季節変化を平均化できるし…。その前に国を越えるという難問がありそうです。

いろいろと超伝導の不思議の話を伺いましたが、百聞は一見にしかずということで、実際に実験してみようということになりました。


一斉に参加者のみなさんの目が輝いてきました。
実験テーブル前にみんな集合です。

液体窒素を流し込みます。

「おーっ」

十分に冷えた超伝導体にいよいよ磁石を浮かべます。
「マイスナー状態になっています」


「おーっ」

みなさん一斉にカメラ片手にパシャパシャと撮影会がはじまりました(笑)。

「磁石のNとSをひっくり返しても・・・、浮きます。」

「おーっ」

西田さん、さらに大きな磁石を浮かす為に大きな超伝導体を取り出しました。

「おーっ」

この大きな超伝導体に浮かべる、磁石には地球儀が取り付けられています。これが浮かんで、さらに地球の磁石が回りだすと・・・。


拍手が起きました!

またもや撮影会のはじまりです。今度は動画撮影されているかたも・・・。
(youtubeにそのときの動画がアップされていました。コチラです。)

目の前で超伝導現象を見て、みなさんさらに関心が高まり、

「ふかふか浮かぶ超伝導ベットがほしい」
「落ちたら液体窒素で危ないよ」
「でも、夏は涼しいかもね」

などなど、会場のあちこちで超伝導雑談が沸き起こっていました。

今回のカフェペディアでは貴重な超伝導実験を目の前で見ることができ、みなさん超伝導の不思議を体感することができました。

世話人の私もまさかカフェで超伝導の実験をやるなんて思ってもみませんでした。いやー、やっぱり実験は楽しいですね。もっと学生時代に実験を楽しんでおけばよかったと悔やんでおります。今後もカフェペディアでいろいろと実験をやりたいな・・・とひそかに思う世話人でありました。

西田さん、盛りだくさんの内容ありがとうございました。リニア鉄道、ぜひ体験試乗したいですね。

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