正直言って私、学生時代には地学はいまいち興味が湧かない分野でした。実物を見たこともない岩石の名前を覚えるのが苦手でしかもどうも地味なものに感じていたからです。しかし、社会人になってこれまで興味があった生物や生態系についてさらに学び、理解を深めていくにつれて、実は生物や生態系は地球そのものと深くつながっていることに気づき、非常に地学を含めた地球科学に興味を持つようになりました。今回のカフェペディアはそんな私の興味関心の中でまさにタイムリーなテーマで開催されたものでした。

さて、会場のcreamに現れた今回の語り手、森さんのバックパックから取り出されたのは・・・巨大な岩が二つ。しかもかなり重い・・・。今までカフェペディアの会場に持ち込まれた展示物としては最重量物ではないかと思われます。確かに、森さんには「会場にヒスイを持ってきていただければ非常にイメージが湧きやすいです。」とはお願いしたもののこんなに重いものだとは知らず・・・。森さん申し訳ありませんでした。しかし会場入り口のテーブルに置かれたヒスイが目を引かないわけはなく、来場者のみなさんはペタペタとヒスイを触っておりました。
さて、いよいよこのヒスイについてのお話がスタートです。
カフェペディアの告知の際には「鉱物、ヒスイ」と書いたのですが、実はヒスイは少々違いまして。例えばダイヤモンドの宝石は一つの鉱物を磨いて宝石にしているわけでありますが、ヒスイはヒスイ輝石を主として様々な鉱物が集まった岩石を磨いて宝石にしたものなのです。ですから、厳密にはヒスイは鉱物ではなく岩石であったのです。で、様々な鉱物が集まってできた岩石ですから、交じり合ったものによっていろいろな色のヒスイが出来るわけです。このようなこと考えたこともありませんでした。確かに一つの鉱物でできた宝石であれば多様な色が出るわけもなく、多様な色ができるのはいろいろなものが交じり合っているからだということは確かにその通りです。きらきらしていれば宝石だと思っていた私にとっては、今まで宝石に対して非常に失礼であったと反省しました。
さてこのヒスイ、世界中における産地はなんとダイヤモンドより少ないのです!主要な産地はミャンマー北部、中米グアテマラ、カザフ地方、そして日本なのです!しかも日本には多数のヒスイの産地があるそうなのです。資源がないと言われる日本で宝石が採れるなんて思ってもいませんでした。

で、様々な日本のヒスイ産地の写真を見せていただいたのですが・・・。何の変哲もない山間部を流れる渓流の写真を森さんは「これとこれがヒスイで、ここは石灰岩ですねー」と指差して解説するのですが、私も含め会場の参加者は「・・・。」です。違いがわかりません。同じ風景でも見方と言うか、見る人によって見い出せるものが違うんですね。確かに私も昆虫が写っている草むらの写真を「こことここにいるよねー」っと自慢げに見せても、反応が「・・・。」の時が多々あります。当たり前のことかもしれませんが見る側の興味関心が違えば同じ風景でも見え方が違うんですね。そう思うと我々の身の回りは発見と驚きに満ち溢れているわけです。
話はヒスイの紹介から、そもそも岩石学の世界とはという内容へと進みました。
「岩石学の目指すもの、それは陰陽五行の思想に通じる」と語る森さん・・・。
どうつながるのだろう?ってのが私の正直な感想でした。

陰陽五行では木、火、土、金、水はどれも不変ではなく変化していくものとされています。すなわち万物は流転していくのです。
岩石も同じく不変ではない!
マントル→火成岩→砂や土→堆積岩→変成岩→マントル
などと長い時間をかけて変化していくわけです。
岩石がどのように、どれだけの時間をかけて変化していくのか、それにより地球の姿を考えようというのが岩石学なのです。
私、森さんのこの解説を聞いて
最初に森さんが「岩石学っていうのはありふれた非日常なんですよね。みんな岩石の上に住んでいる。でも普段はそれに気づかないんですよね」っと、さらっと言われていたことと、何の変哲もない山間部を流れる渓流の風景から岩石を見出す森さんの視点が私の中でつながり、おおーっとなんともいえない感動を感じてしまいました。
私も好奇心旺盛な方で土の中の小さな虫から宇宙の起源まで興味がありすぎるくらいあるのですが、そんないろいろなことを興味を持って考えていると、私たちが生きるこの世界は捉える空間的、時間的スケールこそ違えども、何か一つの大きな流れがあるように感じてしまう瞬間があります。今回の森さんの話を聞いていてその瞬間を感じてしまいました。
さて、岩石を知ることで地球の姿を考えるのが岩石学ですが、人間の寿命に比べて、岩石や地球の変化の時間はあまりにもゆったりとしていてその変化を見出すは非常に困難です。では岩石学ではどのようにしてその時間の壁に立ち向かうのか?「逆問題を解く」と森さんは言われました。これはどういうことかと言うと、例えば7+2=?という問題であれば答えは9とすぐにでますが、a+b=9という問題でaとbが何であるかを知るためには与えられた式が一つではわかりません。ここにa-b=5というもう一つの式が与えられればaとbを導き出すことができます。

岩石学も同じようにいろいろな岩石を調べ、いろいろな人の研究と比べることで、その岩石の謎が解き明かされていくわけであります。そしてその謎解きは決して一人ではできないのです。地球の謎に人類が協力して取り組む。このことに私、管理人はこれまたすごく熱くこみ上げてくるものを感じました。
こうして岩石学では様々な人々が時には協力し、時には競い合いながら地球の謎に迫っていくわけですが、ヒスイはその中でもその起源を調べることが最高クラスに困難なものなのだそうです。なぜかというとそもそも見出されるヒスイのサンプルパターンが少ないからなのだそうです。つまりa+b=9のaとb
を知りたいのだが、a+b=9の式しか見つからないわけです。こうした困難の中でヒスイの起源については現在大きく二つの説があって、一つは岩石がその成分の入れ替えによってヒスイになるという交代説、もう一つは水分から水あかのようにできるという沈殿説です。どちらの説も一長一短があって、交代説ではどんな岩がどのような過程でできるのかという証拠が見つかっていないということ、沈殿説では水はどこにでもあるのだから、ある場所にだけヒスイができるという珍しさを説明できない。と、未だにどちらの説も決定打に欠けているわけです。

森さん曰く、地球の奥深くで起きていること、人間の目で見ることができないこと、それをどうにかこうにか説明しようというところがおもしろい!
これまでカフェぺディアで様々な語り手の方々の世界に触れ、思ったことは人間は目に見えないことでも「考える」という能力を使って知ることが、知ろうとすることができるんですね。これが人間のおもしろさであると私は感じています。そしてその「考える」能力があるかぎりはこの世界は発見と驚きに満ち溢れ、決して退屈することはないんだろうなーと、森さんのお話を聞きながらぼんやりと思いました。

いつものようにカフェペディア本編(?)の後はアフターカフェペディア(こちらのほうが本編でしょうか・・・)でたっぷりと岩石の世界について語り合いました。森さん、遅い時間までお付き合いいただきありがとうございました。いのちのたび博物館で開催されるオルメカ文明展のヒスイの仮面、ぜひ見に行きたいと思います。
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